イノシシが搬入され内臓抜き→皮剥き→5日〜1週間程度のチルド熟成を経ての精肉となります。PSE肉は解体後に直ぐに食べれば、柔らかくて美味しいとも言われていますが、熟成をすることで出る旨味とは全く異なる食味となるのでTGCでは卸してはいません。また、通常肉と熟成期間の足並みが揃わないので、PSE肉部分は早めに傷んでしまいがちです。基本的に最終判断は精肉時になるので、破棄となれば解体からの手間が全て無駄になってしまいます。そんなPSE肉と対面すると、実に残念な気持ちでいっぱいになります。
ジビエ肉がPSE肉になる原因は、身体的ストレスと止めさし時の外傷があります。精神的ストレスの事例は少ないのですが、生きている状態で動きを止めても過度なストレスがかかりPSE肉となることもあります。くくり罠が掛かった足・箱罠の鉄柵に思い切り身体をぶつけた全身が満遍なくPSE肉になるのは、罠を掛けての駆除という時点で避けられない部分で、変えることが難しいところでもあります。
変えることができるのは、止めさし時の外傷。特に銃に関してはその衝撃から、弾が入っているところだけでなく、同心円状に衝撃波が広がってPSE肉になることが多々あります。なので、撃つ場所と弾道が特に重要になってきます。イノシシは罠に掛かると向かってくるため、向かってきた正面の状態で撃つと、頭から入った弾が胸にまで到達してしまい、広い範囲で PSE肉になるケースがあります。食肉として確保するするには、イノシシの顔が横向きになった際に、脳を通過するように撃つのがベストです。その環境コンディションや、イノシシの猛り具合などの条件に差はありますが、”イノシシの動きを注意深く見て、横向きになった瞬間に撃ち”、命を止める。駆除で終わらず美味しいと言って食べてもらえる肉として届けたい、日々です。